一般社団法人の解散・清算手続きは、多くの事業者様にとって馴染みの薄い手続きです。
「解散を決めれば終わり」と考えがちですが、実際には社員総会での特別決議から始まり、
債権者保護手続き、清算結了登記まで、複数のステップを確実に進める必要があります。
本記事では、当事務所が実際に携わった一般社団法人の解散・清算事例を通じて、その
具体的な手続きの流れと注意点をご紹介いたします。
2022年の梅雨に入る前のある日、
当事務所宛に法人を解散する運びとなったとのメールがあり、
状況を伺ったところ、
一般社団法人の解散・清算手続に携わることがことになりました。
本投稿は、一般社団法人の解散手続の流れに従いながら、当事務所が携わった手続を記載します。
本投稿の目次
- 一般社団法人の解散事由
- 一般社団法人の解散、精算結了までの流れ
- 一般社団法人の解散にかかる事業主の想い
- 社員総会開催までに納品した書類
- 社員総会の決議
- 解散公告 債権者保護手続き(2ヶ月以上)
- 社員総会による決算報告書の承認
- 法務局で清算結了の登記申請
一般社団法人の解散事由
一般社団法人の解散事由は、『一般社団法人及び一般財団法人に関する法律』に定められていまして、下記に掲げる事由によって解散します。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散の事由の発生
- 社員総会の決議
- 社員が欠けたこと
- 合併(当該一般社団法人が消滅する場合に限る)
- 破産手続開始の決定
- 解散命令または解散を命ずる裁判があったとき
今回、私が携わった一般社団法人の解散事由は、『三、社員総会の決議』によることとなりました。
一般社団法人の社員総会での解散決議には、特別決議が必要です。
特別決議とは、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行うものです。
一般社団法人の解散、清算結了までの流れ
一般社団法人の社員総会の特別決議によって解散する場合の流れは、
次の通りです。
- 社員総会による解散の特別決議と清算人選任の決議
- 法務局で解散及び清算人選任の登記申請
- 清算人による解散後清算手続き開始
- 解散公告 債権者保護手続き(2ヶ月以上)
- 財産の現況を調査(財産目録・貸借対照表の作成)
- 残余財産を処分する
- 社員総会による決算報告書の承認
- 法務局で清算結了の登記申請→法人格が消滅
当事務所が携わった解散、清算結了までの流れになります。
財産調査や残余財産に関する会計処理、税務申告は事業主の担当でした。
一般社団法人の解散にかかる事業主の想い
事業主である代表理事と話してみたのですが、一般社団法人の解散理由はいくつかありました。
その中で「コロナ」という言葉がでてきました。
法人の事業活動の中で、コロナによる三密回避の行動制限が事業に影響があったようです。
事業主は税理士事務所にお勤めであった経験があったことから、会計・決算関係については事業主がこれまで行っていますので、解散・清算手続の過程においても事業主の方で主体的に対応することになりました。
当事務所は行政書士として出来る範囲を行い、登記は司法書士事務所に依頼するという役割分担で進めることとなりました。
2022年10月時点で、司法書士事務所に依頼した清算結了登記が完了し、法人異動事項申告書は当事務所で書面を作成して依頼者へ納品して、事業主が郵送しています。
本投稿では、
一般社団法人の解散から清算結了までの手続支援の経験から、一般社団法人を解散することをお考えの事業者様に対して、一般社団法人の解散手続、清算手続に必要となる手続きについて、記載しています。
当事務所では、株式会社を含めた法人設立支援を業務として依頼を受けていましたが、
今回、
解散・清算結了という法人の終わりを司法書士事務所と打合せて役割分担を確立させて、進めながら携わりました。
解散した法人の事業者様からは、「法人解散を簡単に考えていた。解散すると言えば、終わるモノだと思っていた。」
との発言がありまして・・・、解散の決意から清算結了までの手続が想像を超えていたのでしょう。
今回、事業主が解散を考えたころから、社員に「解散したい」旨を伝えていたようです。
気心の知れた社員であったこともあって、事業主の「解散したい」発言に拒否反応を示す社員はいなかったようです。
社員総会開催までに納品した書類
社員総会で解散を決議することになるのですが、解散後の法人の残務処理を行う清算人を選任することも必要になります。
清算人となる人は、大概は代表理事が就任するのですが、それも社員総会の決議事項になります。
事業主から社員は気心の知れた人ばかりと聞いていたのですが、社員総会の議事運営を考えるとシナリオも必要となります。
当事務所は、社員総会開催の決定を受けて
社員総会の議案書、
社員総会開催通知、出席通知書、委任状、議決権行使書、
社員総会シナリオを
事業主に納品しました。
事業主により社員総会開催日時の決定を受けて、当事務所は社員総会の議案書と開催通知、出席通知書、委任状、議決権行使書を作成しました。
事業主は、社員総会の議案書と開催通知、出席通知書、委任状、議決権行使書を全社員に発送しました。
出席通知書か委任状、議決権行使書のどちらか1通を総会開催日前までに返信して欲しいので、返信締め切り日を記載しておきました。
社員総会の決議
社員総会で議長となるのは定款に記載してあるとおりに代表理事がなります。
次に法人の債権者保護手続きとして、官報に法人が解散することを公告します。
官報による解散公告とは別に、法人が把握している個別の債権者(知れたる債権者)に対して、事業者自身が解散の通知を行います。
当事務所は官報に解散公告するために、事業主に代わって法人の解散公告の掲載を専門事業者に依頼して、掲載料の支払いをしました。
社員総会後には、社員総会議事録と清算人の就任承諾書を作成して、事業主から押印していただきました。
加えて、司法書士事務所からの登記委任状、法人印鑑届出書にも押印していただいています。
その後は、法人印鑑カードと定款を用意して司法書士事務所に郵送。
翌日には郵便物が届いたことから、司法書士事務所の方でが解散登記を行っています。
解散公告 債権者保護手続き(2ヶ月以上)
解散後、官報に解散公告を専門業者に依頼しました。
法人は解散後、債権者に対して「2か月」以上の期間内に、その債権を申し出るべきと官報に公告しなければいけません。
法人の知れてる債権者に対して、個別に催告が必要となります。
清算人が清算法人の債務を確定させることにより、円滑な清算手続を実現させるためです。
原則として、清算法人は、上記期間中は債務の弁済をすることができません。
社員総会による決算報告書の承認
2ヶ月以上もの債権者保護の期間が終了した日の後、決算報告の承認の為の社員総会開催日時を事業者兼清算人と打ち合わせしました。
その際に清算結果の内容を確認した上で、清算報告書の作成を行いました。
再度、社員総会を開催する必要がありますので、
社員総会の議案書、
社員総会開催通知、出席通知書、委任状、議決権行使書、
社員総会シナリオを
事業主に納品しました。
事業者兼清算人の方で、社員総会の議案書と開催通知、出席通知書、委任状、議決権行使書を全社員に発送しました。
出席通知書か委任状、議決権行使書のどちらか1通を総会開催日前までに返信して欲しいので、返信締め切り日を記載しておきました。
社員総会開催日、社員総会が無事に開催されました。
社員総会議事録を作成して、事業主から押印していただきました。
加えて、司法書士事務所から預かった登記委任状にも押印していただいています。
その後は、
社員総会議事と決算報告書、登記委任状を用意して司法書士事務所に郵送。
法務局で清算結了の登記申請
郵送した社員総会議事と決算報告書、登記委任状は、司法書士事務所に到着した後に清算結了登記が行われまして、当事務所宛に連絡がありました。
清算人に対して、当事務所から清算結了の登記が行われたことの報告メールを行いました。
司法書士事務所で清算登記が行われて8日経った日、司法書士事務所から清算登記完了したとの連絡があり、
後日、清算結了と閉鎖と記載のある履歴事項全部証明書(登記簿謄本)と社員総会議事録の原本が、当事務所に届きました。
これで、一般社団法人が清算結了になれば、法人格は消滅します。
当事務所が作成した法人異動事項申告書(清算結了)、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)と社員総会議事録を清算人に
郵送しました。
清算人は、法人異動事項申告書(清算結了)を郵送しています。
まとめ
一般社団法人の解散・清算手続きは、決して簡単なものではありません。
本事例では、事業主様、司法書士事務所、当事務所が適切に役割分担を行い、約4ヶ月をかけて全ての手続きを
完了させました。特に重要なポイントは以下の3点です:
- 社員総会での特別決議と清算人の選任
- 債権者保護手続きの確実な実施(2ヶ月以上)
- 各種書類の作成と提出における正確性
解散を検討されている事業者様におかれましては、専門家との連携を図りながら、法令に則った適切な手続きの
実施をお勧めいたします。
当事務所では、今回の経験を活かし、今後も解散・清算手続きに関する支援を行ってまいります。