こんにちは、起業支援として会社設立や融資支援をしている大阪府大東市の行政書士の
濵元 英徳です。
新型コロナウィルス蔓延に伴い、「ゼロゼロ融資」による資金調達をした事業者の内、
据置期間が終わることになっても売上がコロナ前までの戻らず、元金返済に苦慮する
事業者がいるようです。
元金返済出来ない状態で据置期間が終わるギリギリになって金融機関に申し出ても、
リスケは認めてもらえる可能性はありません。
では、いつからリスケの「計画」を始めるか?
2024年11月26日(日)の日本経済新聞に、興味深い記事がありました。
「金融庁の金融機関向け指針、資金繰り→再生支援に軸」に書かれていた概要は以下の通りです。 ●2024年春に改正する監督指針には、「企業の資金繰りから事業再生に支援の軸足を移す」ように明記される ●過剰債務を抱える融資先に対しては債権放棄を含む抜本策の実施を促す。安易な返済猶予によって企業の経営状況がより深刻化するのを防ぐ ●今回、再生支援にかじを切るのは、安易な返済猶予が事業再生をより難しくするとみているため ●資金繰りを支えた実質無利子・無担保のゼロゼロ融資は、借り換えが来年4月でほぼ一巡する ●多くの金融機関はコロナ禍で過剰債務に陥った企業向け融資を正常債権として扱っており、倒産に備えた貸倒引当金を十分積んでいない 出典:日本経済新聞『金融庁の金融機関向け指針、資金繰り→再生支援に軸 来春改正、コロナ対応一巡』 |
2024/01/15 読売新聞Webサイト(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240115-OYT1T50160/)
にこんな記事がありました。
23年の倒産件数、4年ぶり8000件超…中小向け「ゼロゼロ融資」の返済本格化が影響 2023年の全国倒産件数が前年比35%増の8690件だったと発表した。 出典:読売新聞Webサイト(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20240115-OYT1T50160/) |
いきなり倒産する企業はほとんどない
業績が悪化したからといって、いきなり倒産する企業はほとんどありません。
「まずは金融機関にリスケを申し出て返済猶予を行い、その返済猶予期間で経営改善に
取り組みながら正常化を目指す」というプロセスを踏みます。
この返済猶予期間内にうまく経営改善ができなければ「事業再生不可能」となり、倒産に
至ります。
リスケに応じてもらえなければ事業継続は困難
リスケを行うにしても、そのタイミングが重要です。
資金繰りが厳しくなり「来月から返済ができない」というタイミングでリスケを申し出ても、
まず金融機関は首を縦に振りません。
金融機関としてはリスケを依頼されても、応じるかどうか判断するのにある程度の時間が
かかるからです。
いきなり「来月からリスケお願いします」と言われても、金融機関は対応できません。
リスケに応じてもらえなければ、事業者は「返済を続けるか」、「延滞するか」しか選択肢が
なくなります。
返済を続けると資金繰りは当然より厳しくなるため、事業継続が困難になります。
かといって、延滞してしまうと「期限の利益を喪失」してしまうため、全額返済を求められます。
全額返済できなければ担保不動産の競売や、保証人への代位弁済請求となり、いよいよ事業継続は
絶望的になります。
「事業を立て直したい」と望む限り、何としてでも金融機関にはリスケに応じてもらわないと
いけません。
それには「計画」が必要です。
リスケ依頼の段取り
適切な段取りを踏めば、金融機関はリスケ依頼にスムーズに応じやすくなります。
(1)6ヶ月前がリスケ検討タイミング
リスケ依頼の検討を始めるタイミングは、リスケ実行時期の【6ヶ月前】です。
資金的な余裕がない状態でリスケを依頼したと考えましょう。この場合、すぐに認めてもらえないと
困りますから、交渉に時間をかけることができません。
金融機関から厳しい条件を突きつけられても、飲まざるを得なくなります。
しかし6ヶ月前の時点では、苦しいながらもまだ資金的な余裕はあるでしょう。
その状況で交渉に臨めば、交渉に時間をかけられます。ある程度は事業者側の要望を聞いてもらえる
可能性が出てきます。この差は、とても大きい。
期でいえば、直近決算で「債務超過」に陥ったときが、リスケ検討タイミングでしょう。
「債務超過」になると、基本的に金融機関からは「新規融資」には応じてもらいにくくなります。
そこで「資金繰り表」を作成し、「リスケを依頼するかどうか」の判断をいったんこのタイミングで
しておきましょう。
「資金繰り表」として、日々の資金管理として「日繰り表」、月々の資金管理として「月次資金繰り
表」の作成を経営者自身で行うことがお勧めです。
(2)3ヶ月前には「融資の依頼」
ここでリスケ依頼の判断をしても、すぐにその実行に向けて動くのではありません。
新規融資に応じてもらいにくいことはわかっていても、リスケを実行してもらいたい時期の
【3ヶ月前】に、「あえて」金融機関に「融資の依頼」を行ってください。
かなり高い確率で断られますが、それが目的です。「融資を申し込んだが断られた」という
結果を出して、「融資してもらえなかったのでリスケせざるを得ない」状況を金融機関に
わかってもらうのです。
ここまで来ればリスケの依頼をしても、金融機関としては「融資を断ったからリスケも致し方ない」と
考えやすくなるでしょう。
(3)2ヶ月前の「経営改善計画書」提出が理想
リスケ依頼には、「どう正常化していくのか」を説明する資料として「経営改善計画書」を提出する
必要があります。
金融機関はこの経営改善計画書の内容を精査し、リスケに応じるかどうか、また、応じるなら条件を
決めます。
その審査には、少なくとも1ヶ月程度の時間が必要でしょう。
また、1ヶ月程度で結論が出ても、事業者がとても受け入れられない厳しい条件を突きつけられることも
多々あります。
こうなると交渉が必要です。時間がかかります。だからこそ、経営改善計画書は【2ヶ月前】に提出する
のが理想なのです。
リスケ検討タイミングで「資金繰り表」を作成
上記で、直近決算で債務超過に陥ったときがリスケ検討タイミングだとお伝えしました。
その判断材料として、当事務所から作成提案したいのが「資金繰り表」です。
半年先の資金繰りをイメージできている経営者はほとんどいないでしょう。
6ヶ月前の時点では、なかなか危機感を覚えないのは当然です。
早くて3ヶ月前。1ヶ月前でようやく初めて、という経営者も少なくありません。
そこで資金繰り表です。
直近決算で「債務超過」が明らかになったタイミングで、6ヶ月間先の資金繰り表を作成しましょう。
財務の深刻度を、経営者ご自身が認識してもらうことが必要なのです。
「来月に資金ショート」といった切羽詰まったタイミングではなく、「今からリスケ準備して
おかないと」と積極的に取り組む意識を持ってもらえるでしょう。
判断のタイミングが早ければ早いほど、手を打ちやすくなるのは言うまでもありません。
ご自身の事業で債務超過に陥ることが予想できたのなら、そのタイミングでから毎月「資金繰り
表」を作成しましょう。
債務超過に陥ることがなくても、金融機関から融資を受けている、借り入れしているなら、
今からでも遅くはないので、日々の資金管理として「日繰り表」と月々の資金管理として
「月次資金繰り表」の「資金繰り表」を作成しましょう。
資金繰り表の作成はそう難しくありません。
一度作り方がわかれば、次からはスムーズに作成できるようになります。
リスケ依頼時は、「経営改善計画書」を作成して提出する必要があるとお伝えしました。
が、実は「コロナ融資の借換」を行う場合も、「経営改善計画書」を作成しておいたほうが
よいのです。
基本的にコロナ融資の場合、公庫なら「公庫融資借換特例制度」を、信用保証協会の保証つき
融資(いわゆる「民間金融機関ゼロゼロ融資」)なら「コロナ借換保証制度」を利用すること
で、返済猶予期間を延長できます。
また、その際経営改善計画書の提出は不要です。
しかし返済猶予期間を無事延長できたとしても、それは単なる「先送り」。
返済猶予期間が終了すれば、返済は始まります。
そのとき「返済できる経営体質」に変わっていなければ、返済猶予期間を延ばした意味が
なくなります。
返済猶予期間を延長している間に「返済できる経営体質」に変わるため、その指標となる
「経営改善計画書」を作成しておきたいものです。
とはいえ経営者が自分一人で「経営改善計画書」を作成するのは困難でしょう。
当事務所では、リスケなどに必要となる「経営改善計画書」の作成支援、経営者の資金繰り表
作成支援、銀行への同行など経営者様の資金繰り支援を行います。